2004年10月30日

感動を。

 「スポーツって感動だよね。それを守れなくて、なにが先進国だ。」
ビデオに録ってあるわけではないので、正確な表現までは自信がない。しかし発言の大意はあっているはずである。
『Zone』(TBS系)で放送された高橋健次の発言である。

 高橋健次。享年53歳。元日光アイスバックスとちぎ社長。
 アイスホッケー日本リーグの名門、古河電工の廃部後、クラブチーム化に貢献した人物である。地域密着のクラブを目指し、野球・サッカーよりも注目度の低いアイスホッケー日本リーグでのクラブ化を実現に大きく貢献した。オリンピック中継を見ながら、不況により企業スポーツが衰退し、スポーツをする、見る機会が減ることに対する危惧をあらわしたのが冒頭の発言だった。

 プレーをするのは選手である。そしてそれを見て感動をするのは観客であり、視聴者である。感動を大切にするために必要な視点は、ファンに対するものである。アイスバックスはクラブ化以来、ファンサービスに対する意識の向上につとめている。

 プロ野球の再編に対するファンの予想以上の抵抗は、感動をする場が奪われることに対する抵抗であったのかもしれない。経営者には本社の広告効果などの経済的な観点しかもちあわせていないように見える。観客がいて、選手がいて、経営者がいる。この3者がいて、はじめて、スポーツの持つ感動性が生まれるのである。
 日本ハムが北海道に移転し、パ・リーグにプレーオフが導入された。消化試合を少なくするため、新しいファン開拓のため、チームの独自性を打ち出すため、新たに今年から生まれたものは観客、ファンに向けられたものであった。大衆は敏感だった。横浜対巨人戦に1万8000人しか訪れなかったその日、プレーオフ進出をめざした日本ハムの札幌ドームの試合には4万2000人がつめかけた。
 勢いにのる日本ハムは格上と見られてた西武から第2戦を奪い、第2ステージを賭けた今日の試合も、最終回に同点に追いつく劇的な試合を演じた。西武のサヨナラホームランの出たあとでも、力を出し切った選手からは健闘をたたえあう姿があり、死闘を尽くした試合につめかけた観衆も大歓声の一戦だった。

 長きにわたり、日本のスポーツではプロ野球を除き、観客というものを軽視する傾向があった。スタジアムをみれば一目瞭然である。観客を意識したJリーグ構想以降のスタジアムとそれ以前のスタジアムでは、スタンドからの見易さなどを比べても大きな違いがある。プレーさえできればいい、という考えが根底にはあった。こうした国のスポーツに感動は多く生まれない。

 イチローがついに年間最多安打を達成した。
 以前から観客へのサービスに対しては気を配っていたMLBではあったが、94年のストライキ以後、その意識はより強くなっている。イチローの年間安打には、試合数の違いなど記録として評価が分かれる視点もあることはあった。しかしファンに最高のプレーを見せ、感動を与えてくれる選手に対して、リーグは、ファンは素直に敬意を表してくれる。スペクテイター・スポーツとしての価値を高めるMLBにあって、時代が違くとも、記録に迫り挑戦する姿は評価に値するものだったのであろう。
 そして遠く日本まで感動を与えるイチローは、言葉では言い尽くせない偉大な選手である。

 スポーツという分野は、産業的にまだまだ発展の余地があると見られている。いままで競技者中心の世界から、Jリーグ誕生以後、スペクテイター・スポーツの可能性が高まり、また健康などの面から生涯スポーツとしての面からも、伸びしろのあると注目されている。
 反対に、過去それだけ、観客・大衆に向けられたサービスが少なかったという表れでもある。文化としてスポーツを発展させるため、より多くの感動をスポーツを通じてあたえるために、観客を意識した改革はよりいっそう重要性を増すであろう。

 プロ野球パ・リーグのプレーオフ進出争い、プレーオフ。MLBにサッカー。
 続けざまに起きている出来事にあわせて気持ちを書いてみた。熱い気持ちはずっと持っていたい。


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Posted by scrumhalf at 17:30│Comments(0)スポーツ全般


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