2001年11月04日

折れかけた翼

42,011人。鳥屋野潟にある白鳥をイメージしたスタジアムには、自らの持つJ2の入場記録を更新する人数が駆けつけた。入場者のほとんどが、そしてオレンジのユニフォームの選手が、勝ち点3を奪うことを願っていた。

 試合は後半18分までは京都ペース。しかしながら、スコアは新潟の2−1。3点とも流れの悪くなりかけた方が点を取るという展開だった。新潟の先取点は最初に訪れたチャンスを、京都の同点ゴールはいい流れが膠着した時間帯に、新潟の2点目にいたっては、点の入った瞬間はしっかり覚えていたものの、どういった展開で氏原が抜け出たか、夜のニュースを見るまで思い出せなかった。ただ突然チャンスになったことだけは確かだ。新潟に点が入るような流れにはとても思えなかったのだ。

 そして勝ち越した新潟は、ここから終了間際まで完全にペースを握る。チェックの位置が、点を取る前より高くなり、より前でボールを奪えるようになった。その結果京都中盤はやや乱れ、フリーになる新潟の選手が多くなり、得点のチャンスが何度も訪れる。ここでもう一点入っていれば、勝負は完全に決していた。

 しかし後半43分。ここまでの展開がそうであったように、流れの悪かった京都に突然チャンスが訪れる。ここ15分の間、ほとんどフリーで前を向けなかった京都の中盤が、この時だけは余裕があった。ゴール前に上がったアーリークロスが長身の上野へ。やや距離のあった力のないヘディングシュートは、途中から振り出した雨を気にしすぎたのか、GK野澤の手をかすめゴールへ。奪いかけた勝ち点3は手のひらからこぼれ落ちた。静寂のスタジアムに90分の終了を告げる笛が鳴った。

 首位であった京都と勝ち点差は4。3つ縮めることはできなかったが、ここで2を加えることができれば、毎年終盤にドラマの起こる昇格争いを考えれば、望みはまだかなりあった。しかしスタジアム内は、勝ち点2を奪いに行くという雰囲気よりも、勝ち点3を取れなかった失望感が勝っていた。GK野澤も2点目の影響で積極性を失いかけていた。こうして訪れたVゴールは、この試合初めてゲームを支配してチームに訪れたゴールだった。

 少し疑問の残る判定からのリスタートがそのままVゴールにつながったことによって、新潟サポーターの間では、審判を批判するような意見が聞かれたが、おそらく延長を無難に裁いたとしても、訪れた結果は同じであったように思う。終了間際の同点劇によって、そして試合前の勝ち点3への願いが強かったため、延長では勝ち点2への執着心がチーム、サポーターに感じられなかった。ゲームは同点ゴールで決まっていた。

 しかし、毎年候補にもあがらなかったアルビレックスがこれほど一つの試合の勝ち点3を渇望したのは初めてだろう。サッカーの世界では、こうした初体験の状況で悲劇的な結末がよくあらわれる。これはチームがさらに力をつけるための通過儀礼のようなものだ。これを力にするかどうかはこれからの努力しだいなのである。
 試合後、力なく崩れ落ちた翼は力を取り戻す日がくるのだろうか。少なくとも私は近いうちに訪れると思う。少なくとも北陸のクラブチームには、翼を支えるだけのサポーターが毎試合スタジアムに訪れている。観客の力を借りれば、翼はすぐに再生する。

2001 J2第41節
アルビレックス新潟 2(Vゴール)3 京都パープルサンガ
2001.11.3 at Big Swan Stadium


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Posted by scrumhalf at 17:29│Comments(0)サッカー


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