【YAMAGA PLAY BACK 11】

scrumhalf

2009年08月29日 01:11


辛島山雅の最高傑作
2006.9.3 松本山雅FC VS 長野エルザSC


天皇杯予選を兼ねた第11回の長野県サッカー選手権大会。
北信越1部リーグに昇格したその年に、松本山雅FCは久しぶりに天皇杯予選の決勝の舞台に立った。

相手は長野エルザSC(現・AC長野パルセイロ)。
2004年に天皇杯に初出場するも、アルウィン開催の1回戦でホンダロックに敗戦。
これだけの実績を残しながら、優勝がこれ一度のみという不思議と天皇杯に縁がない。

そしてこの年は、松本山雅が南長野でのアウェイ開幕戦で2-0とエルザに完勝。
続くアルウィンでの雨中のダービーも、エルザから移籍してきた石堂のアシストで白尾が決勝ゴールと2連勝。
エルザ相手に悪いイメージはなかったはず。

そうはいってもリーグでも競っている両チーム。
試合は緊迫したロースコアのゲームになると思われた。

前半はお互いの様子を探りながらの攻防。
山雅DFのミスから先制したエルザだったが、崩したうえでの得点ではなかった。
山雅も前半のうちに、白尾が角度のないところから強引にシュート。
コースはなかったが、GKにあたったボールは枠内に吸い込まれた。
ストライカーとしての面目躍如のゴールだった。

1-1のハーフタイム。やはり緊迫した戦いが行われると感じていた。
しかし後半様相は一変する。

後半開始直後、右45度から小澤が逆サイドのサイドネットへグランダーシュートを叩き込む。
後半の立ち上がりという取った時間のよかった。
エルザDFはどうも小澤、奈良というシャドーストライカーのように配置された二人を掴まえきれない。
中盤でのボールを支配した山雅は面白いように、この二人が躍動する。

今思えばパサータイプの小澤、ドリブラータイプの奈良に、スピードが持ち味の白尾という絶妙な組み合わせのスリートップだった。
そして辛島監督のこと。おそらくエルザに対して抑えるべきポイントなどを相当シミュレーションしたに違いない。
事実、試合途中からほとんどエルザにチャンスを作らせず、中盤を支配した後は面白いように攻める。

後半中ごろには、ロングボールを受けた奈良が中にドリブルしてからシュート。まったくGKが反応できず。
そして5分も経たないうちにDFと競り合ってこぼれたボールを白尾が押し込み4点目。
最後は集中が切れたところを、セットプレーからのクイックリスタートで小澤が押し込み、まさかの5得点。
完全に気持ちのきれたエルザGKの姿が印象的だった。

これで2度目の天皇杯出場。
この年以降4年連続の県代表決定戦進出、県勢初の3回戦にJ2撃破。2006年以降天皇杯は相性のいい大会となった。

それにしてもこれほどハマった試合もなかなか記憶にない。
GKの弱点と踏んだのであろうか、シュートは徹底してグランダーだった気がする。指示があったかはわからないが、低いボールに難アリと踏んでいたのではないか。
またDFも前半の30分以降は安心して見られる試合だった。

山雅が2006年に北信越1部に昇格して以降、5得点という試合はこれのみ、2007年アウェーダービーの3-0の試合こそあれ、基本的に1点差ゲームがほとんど。
そんな中、カップ戦決勝という舞台で、対戦相手の対策を練り内容、スコアとも完勝したこの日の山雅は、辛島体制の最高傑作と言っていいだろう。

第11回 長野県サッカー選手権大会(天皇杯予選) 決勝
松本山雅FC 5-1 長野エルザSC
2006.9.3 at Alwin(3,145人)

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