【YAMAGA PLAY BACK 3】

scrumhalf

2008年11月15日 01:41


リアルダービーの息吹
2004.8.7 長野エルザ VS 山雅SC


長野エルザ(現・AC長野パルセイロ)のイメージはどうしても三洋電機なのだ。
神戸製鋼のV7の時代に、名勝負を繰り広げたライバルの三洋電機ラグビー部のことである。

「縦のランニングラグビー」の言われた、力強くそしてシンプルなそのラグビーは、うまさや華麗さは感じられなくても、手ごわかった。
長野エルザというチームに抱いていた印象がこれにダブる。
決しては派手なことはしないが、フィジカルが強くシンプルに前に来るスタイルは、手堅くそして強かった。
このスタイルを保ち、北信越リーグの上位争いに絡んでいた長野エルザは県選手権でも優勝候補の筆頭だった。

対する山雅SCは2部リーグでも下位に低迷。県リーグ降格さえ危ぶまれていた。
決定機をなかなか決められないどころか、試合開始直後と試合終了間際に失点を繰り返し、浮上のきっかけを掴めないまま夏場を迎えていた。

この両者が対戦した長野県選手権準決勝。
3年前からスタートしたアルウィンナイターの準決勝。
チーム状態に差がある状態での対戦だったが、このときすでに「リアルダービー」の息吹は出ていた。

一番は山雅サポーター「ULTRAS MATSUMOTO」(以後、このblog内ではUM)が明確な対抗意識を打ち出しただったと思う。
それまでもエルザとの対戦は何度もあった。しかしそれまでの対戦ではあまりライバル意識やダービー意識というものは薄かったように思う。その前に審判と戦う必要があったという側面もあるのだが…。

しかしこの年は違った。
2部に所属し完全に挑戦者の立場であったこと。地元松本で迎え撃つこと。
カップ戦という舞台に年に一度のナイターの舞台。
着実に増えつつあったサポーターもダービーの雰囲気を助長した。

記憶に間違えがなければ、初代の「ULTRAS MATSUMOTO」横断幕が作成され、お目見えしたのがこの試合である。
はっきりと目に見える形での思いはピッチにも伝わったのかもしれない。

試合は開始と同時に山雅がトップギアに入れる。
気迫と運動量で互角の戦いに持ち込み、先制点ももぎ取った。
左45度からのミドルシュートがきれいにゴールに突き刺さった。得点者がだれだか記憶にないのだが(宮田?)、ベンチの喜びようを見ても気合が伝わってきた。

たださすがにいきなりのトップギアは燃料切れを招いた。
徐々に試合を支配され、フィジカルとシンプルなプレーで得点を重ねられ4失点。
チーム状態の差は埋められなかった。

しかし敗れはしたものの、山雅の選手もUMも目指すべきものをしっかり捉えた一戦だったのではないだろうか。
明確に長野というターゲットを認識し、県内でそして北信越で一番になるためにやらなければならないことを感じた夜だったであろう。

この後チームは残留のため、東城以来となる元Jリーガーを加入させる。
上を目指した動きが見え始めていた時期だった。

そして長野対松本は、翌年の県選手権準決勝での再戦、1部復帰後の開幕戦、さらには石堂和人(現・FC町田ゼルビア)の移籍など、数々の因縁とともに「信州ダービー」は全国的にも有名な「リアルダービー」へと変遷していく。


第9回長野県サッカー選手権大会(天皇杯予選) 準決勝
長野エルザ 4-1 山雅SC
2004.8.7 at Alwin

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